M1 Mac miniの動作を検証する(その4)

投稿者: Katsuro Uno 投稿日:

今回発売されたM1チップのMacで懸念されているのは、物理メモリを最大で16GBまでしか積めない事です。こと音楽制作の分野においては大容量サンプルを扱うソフトシンセが数多くあり、またCPUの高速化やSSD/M.2の登場で同時に立ち上げられるソフトシンセの数も飛躍的に伸びてきているため、DAW環境の構築において、メモリを32GBや64GB、可能であればそれ以上搭載させることも珍しくなくなっています。

Logic Proには標準でSampler(元EXS24)というソフトサンプラーが付属し、ダウンロードにより大量のプログラムを入手する事が可能です。今回このSamplerを使い、Logicで大量のメモリ消費をした際にM1 Macはどのような挙動になるのか検証してみます。ただあくまで私個人の勝手な検証になりますので、参考程度にお読みいただけたらと思います。

Logic ProのSamplerはかなり優秀なハードディスク・ストリーミング・エンジンを積んでおり、メモリを16GBしか搭載してないM1 Mac miniでも相当な数のSamplerを立ち上げる事が可能です。そこで今回はLogicの環境設定をいじり、このハードディスク・ストリーミング・エンジンをオフにして、Samplerが読むプログラムのサンプルは物理メモリ上に溜める設定にして検証いたしました。

環境設定>オーディオ>サンプラー>仮想メモリのページの「アクティブ」のチェックを外します。これでハードディスク・ストリーミング・エンジンがオフになります。ただ、Samplerに付属するプログラムは比較的軽いものが多いため、この状態でも210ものSamplerトラックを立ち上げる必要がありました。(疲れました。。)

それではまずはMac mini Core i7 3.2GHz(6core)(32GB RAM)でこのSampler 210トラックのプロジェクトを立ち上げてみましょう。

このインテルMac miniには32GBのメモリが搭載されているため、210トラックものSamplerトラックを立ち上げても立ち上げた後すぐに再生可能です。プロジェクトが立ち上がるとアクティビティモニタが後ろに隠れてしまいますが、プロジェクトが立ち上がった状態で、Logic Proの消費メモリは14.64GB、システム全体での使用済みメモリは18.94GBでした。

続いてMac mini M1(8core)(16GB RAM)で同じプロジェクトを立ち上げてみます。

するとどうでしょう、立ち上がってもすぐには再生できず、しばらくするとレインボーカーソールになり、CPUオーバーロードの警告が出てしまいました。ただその警告をOKで逃れると、次に再生ボタンを押した時は普通に再生してくれます。CPUメーターが安定してきた後はメーターの触れ具合はやはりインテルMac miniと同等な印象になりました。この状態で隠れてしまったアクティビティモニタを確認すると、Logic Proの消費メモリは14.72GB、システム全体での使用済みメモリは13.69GBでした。ん??Logic Proの消費メモリの方が多い!?

M1 Mac miniの挙動の訳は、アクティビティモニタでLogic Proのプロセスの詳細を確認して少し見えた気がしました。まずインテルMac miniでのアクティビティモニタとLogic Proのプロセスの詳細です。

画像下枠のLogic Proのプロセスの詳細を見ると、実メモリサイズが14.77GB、仮想メモリが22.89GBです。

これに対してM1 Mac miniのLogic Proのプロセスの詳細を見てみると、、

実メモリは2.74GB(??)、そして仮想メモリはなんと407.78GB(!!)です。実メモリの表示が2.74GBになっているのはなぜだかよく分かりませんが、400GBを超える大量の仮想メモリを消費しています。

これはあくまで私個人の想像の範疇の話ではありますが、M1 Mac miniで搭載された実メモリ以上のメモリを消費するLogicプロジェクトを立ち上げた時、仮想メモリをかなり積極的に使うのかもしれません。もちろん今までもこの機能は使われてきましたが、400GBを超える仮想メモリを掴むことはなかったように思います。

M1 Mac miniで210トラックのSamplerを使ったプロジェクトを立ち上げた際、最初は再生できなかったものの、しばらくして仮想メモリへの展開を済ませたら普通に再生できたと読むと納得がいきます。Sampler自体の仮装メモリ機能は非アクティブでも、Logic全体で仮装メモリを使った形です。M1 Mac miniは現状で最高速レベルのM.2 SSDを起動ディスクにしているため、仮装ディスクを大胆に使っても十分快適に動作するのかもしれません。


この仮想メモリを大胆に使う機能はM1 MacでLogicを動かした時特有のものなのか、実はBig Surの機能なのか、ひょっとしてアクティビティモニタのプロセスの詳細の表示がそもそもおかしいのか、正直私一人の力では分かりかねるところもございます。ただ今回の検証で一つ言えることは、この動作の感じだと、やっぱり物理メモリはたくさん積んどいた方がいいんじゃない??ということです。大容量ソフトシンセを多用するプロジェクトの際は、仮にM1 Macが仮想メモリを相当効率的に使ったとしても、実メモリの搭載が16GBでは動作をいちいち待たされる可能性がありそうです。


最後に、これは私が一人で勝手に検証して勝手に予想を立てたことです。実際KontaktやPlayなどの大容量サンプルシンセがM1 Macで動くようになったら、また違った動作になるかもしれないことをご了承ください。あくまで今日現在の参考程度にとどめてくださいね。

しかしSampler 210トラック分のプログラムを個別に選ぶのはかなり疲れました。。笑


今回M1 Macの動作検証をするにあたり、なんと!!あのDTMステーションの藤本さんとコラボさせていただいております。私がLogic担当、藤本さんはLogic以外のオーディオインターフェースやDAW、プラグインなどの検証という形で分担いたしました。(明らかに藤本さんの方が物量過多です。。笑)

以下のリンクがM1 Macを検証された藤本さんのDTMステーションです。とても興味深い記事になっておりますのでこちらもぜひご覧ください!!

『M1チップ搭載の新型MacはDTMに使えるのか? DAW、プラグイン、オーディオインターフェイスなど動作状況をチェックしてみた』